le fleuve ルフルーヴ

le fleuve ルフルーヴ

BLOG

2025/06/20 14:25


イタリアから帰ってきたシェフ🇮🇹

今日から4連載でイタリアの滞在記を4週間続けてお届けします!お楽しみに😊


「そもそもなぜイタリアに行こうと思ったのですか?」

きっかけは、去年の冬にイタリアからインターンで来てくれた、Gemmaの存在でした。


彼女はイタリアではシェフとして働いていますが、僕たちの工房に数ヶ月滞在してくれて、

一緒に働いたり、料理を食べさせてもらったり、いろんな話をしたり――

その時間がとても豊かで、気づけば「Gemmaのレストランで働いてみたい」という気持ちが芽生えていました。


レストランとパティスリーは、業態としてはまったく異なるものです。

でも、Gemmaが大切にしているものや、レストランの在り方に触れていると、

どこかルフルーヴが目指している姿と重なる部分があるなと感じていました。


だからこそ、「異なる業態で体験してみたい」と自然と思えたのかもしれません。


そしてもう一つの理由は、実はそれまでイタリアに行ったことがなかったということ。


旅行ではなく、住むように滞在して、現地の人たちと一緒に働いて、イタリアの食を身体で感じたい。そんなリアルなライフスタイルを、肌で体験したいと思ったんです。


この旅は、そうした思いを形にする機会でもありました。


「実際に行ってみて、どうでしたか?」

今回滞在したトスカーナ地方の西海岸の街は、どこかルフルーヴの工房がある養父と似た空気感がありました。

観光シーズンの少し前だったこともあって、人通りはほどよく少なく、街全体にゆったりとした時間が流れていました。

日本の田舎とも違う、でも都会とも違う。

観光地らしさと生活の気配がちょうどよく混ざった街でした。


湿気の多い日本とは違って、空気はカラッとしていて心地よく、自然もすぐそばにあって、公園が生活の一部のように溶け込んでいる。「ああ、こういう時間の流れって豊かだな」と感じる日々でした。


「滞在していたのはどんなところでしたか?」

僕たちが滞在したのは、Gemmaのアパートのちょうど向かい側で、かつての城壁が今も残るエリアでした。昔はここで戦いがあったんだなと思わせるような、歴史の痕跡が随所に感じられる場所です。

建物は石造りで、地震も少ない土地柄だからこそ、何百年も前の姿をそのままに残されていました。町は高台で、見晴らしはとても良く、外敵から攻め込まれにくい地形にもなっています。


僕たちが滞在した家も、築1500年という驚くほど古い建物でした。そんな歴史のある家に滞在させてもらえるというのは、なんとも贅沢で貴重な体験でした。


もちろん、不便なこともあります。城壁の中にあるため坂道は多く、毎日のように急な坂を登って通っていました。道幅も狭いため車は通れず、車は駐車場に停めて、そこから歩いて移動するのが基本です。

でも、そうした不便さをそのまま受け入れて、大切に修繕しながら暮らしている姿が、とても印象的でした。


たとえば、車。日本では10年とか10万kmくらい乗ると買い替えるのが普通になっていますが、向こうではボロボロの車も平気で使っています。貸してもらった車はなんと走行距離40万km。それでも現役です。彼らが仕事で使っている車も、何十年と使い続けているものでした。

「壊れたらすぐ買い換える」のではなく、「直しながら長く使う」。そこには、物を大切にする姿勢、時間をかけて付き合う文化、そして歴史を大事にする価値観が根づいているのだと感じました。


日本にいると、つい“自分の人生のスパン”で物事を考えてしまうけれど、イタリアでは、「1500年前の人たちが暮らしていた場所で、今も人が暮らしている」というような、もっと長い時間の中で生きている感覚になります。

うちの家も築150年で「かなり古い」と思っていたけれど、1500年を前にすると、その感覚すら変わってしまいます。


「向こうでは、どのように過ごしていましたか?」

イタリア滞在中は自炊していたので、スーパーに足繁く通っていました。

そこで特に印象的だったのは、オーガニック商品がしっかりスペースを取って並べられていたこと。


そして何より、地元で作られた食材や商品がたくさん売られていることに驚きました。

日本のスーパーだと、全国どこでも手に入るような商品がずらりと並び、地域ごとの特産品が販売されていることはあまりない気がします。


でもイタリアでは、地域ごとの特色や産物を大切にしている空気がしっかり感じられて、

「地元を愛する文化」が日常の買い物の中にも根付いているんだなと実感しました。


こうした暮らしの中の小さな違いが、食や生活の豊かさにつながっているんだろうなと思います。